18歳 夏 その1

「ねえ。八ヶ岳の上に素敵な湖があるそうよ。行って見ない?」


敏子がそう誘ったのは8月の日差しが一番暑い時だった。


「隣町の有料道路のトンネルの前で待ち合わせしよう。」


康夫が言った。


次の日曜日3台のマシンは八ヶ岳に向かっていた。


いつものように康夫の350F、五郎の250セニア、敏子のDX250の順番だった。


いくつかのホテルや山荘の立ち並ぶ所を進んで行くと


やがて景色は枯れた白樺林になっていた。


先頭の康夫がウインカーを出して左に止まった。


「少し休もう」


街の方を見渡すとかなりの標高を上がって来ている事がわかった。


「綺麗ね。こうやって見渡すとこのまち全部自分のものになった気がするわ」


敏子が言った。


五郎はそんな敏子をみて笑った。


「ねえ。今度私が先に走っていい?」


「飛ばしたいのか?コーナーここからきついから」


康夫が言った。


「じゃあ2番目でいいわ」


敏子がキックを踏み下ろした。


それほど重くはないのであろう。


2.3回の連続のキックでDXのエンジンはかかった。


康夫のFが回転を上げてスタートして行った。


登りだったがそれほど回転をあげずに敏子は後に続いた。


五郎がその後についた。


後ろから敏子を眺めていた。


いや正確にはふっくらとしたそのお尻を見ていた。


直線で軽く前傾姿勢をとると敏子のジーパンの上から白い肌が見えた。


ドキッとした。


3人はつづら折れのコーナーをリズミカルに駆け上がって行った。


峠を過ぎてしばらくコーナーを下ると左側に駐車場らしき広場があった。


車が2・3台止まっていた。


バイクを停め湖の入り口まで向かった。


「湖まで20分も歩くみたいね」


「そんなに人が来るところじゃないから良いんだ。」


道は意外と険しかった。


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深い森の中は緑に包まれていた。


登ったり下りたり道は意外と変化にとんでいた。


「結構つかれるな」


五郎が言った。


「もう少しよ。頑張って」


敏子が答える。


やがて木々の間から湖らしき風景が見えてきた。


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「おお いい感じじゃん」康夫が言った。


「綺麗ね」


「ああ」


3人は山小屋のようなところでジュースを買い湖を眺めた。


人工的なものは一切なくいかにも秘境みたいな感じだった。


湖に伸びる木に登ったりしながら3人は遊んだ。


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1時間もいただろうか?


「そろそろ帰るか?」


康夫が言った。


3人は歩いてきた道を再び戻り駐車場についた。


「こんどは私先頭走っていい?」


敏子が言った。


「ああ 気をつけろよ」


康夫が言った。


敏子、五郎、康夫の順にスタートした。


五郎は敏子の無駄のない走行フォームに見とれていた。


コーナーを4つぐらい回ったぐらいだったか


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突然敏子のバイクからの煙が多くなった。


スピードが上がりストップランプがつくのと同時に敏子の乗ったバイクは綺麗に倒れ


右コーナーを曲がって行った。


「速ええ」


五郎はあわててアクセルを開けた。


次の左コーナーでステップがかすった。


フレームがよれる感覚があったが五郎はさらにアクセルを開けた。


敏子のバイクが次の右コーナーを曲がったあと


五郎の前に観光バスが大きく対向車線ををはみ出ながら曲がってきた。


「やばい。ぶつかる」


大きなクラクションが鳴った。


とほぼ同じに大きな砂煙が上がった。





五郎は左の路肩に横たわっていた。


とっさに左に逃げたところまでは覚えていた。


そのままスライディングしたのだろう。


幸い左側の路肩は広く砂利と草むらで覆われていた。


すぐ後ろの康夫とバスの運転手が近づいてきた。


「大丈夫か?」


康夫が言った。


「ああ。大丈夫だ。このとおり立てる」


五郎は起き上がりバスの運転手に「大丈夫だから行って下さい」と言った。





注)この物語はフィクションです。 実在の人物、団体などには一切関係ありません。
  
  画像はイメージです。(勝手にお借りしました、問題あれば削除いたします。)


次回更新は未定です。